コラム/怪優・怪演大事典

「役者は、怪演してこそ味が出る!」という、少々暴論気味なコラム。

2010年7月 7日 (水)

美男・美女ほど怪演をさせよ!

「怪しげな演技」と書いて「怪演」。平成以降の(特にゴールデンタイムの)ドラマでは、めっきりと怪演で注目される役者というものを見かけなくなった。

自分の中で「怪演」役者の基準とは、たとえば伊藤雄之助である。一度見たら忘れられない馬面に、ギョロリとした目つき。不気味な悪党からお人好しの中年男まで、自在に演じ分けられる、安定した演技力。どんな映画やドラマに出ても、最初のワンシーンだけでは善人か悪人かわからない複雑なたたずまい。「こんな役者、もう出てこないだろうなぁ」と思わせるアクの強い存在感。30年も前に亡くなった人だから、今の若い視聴者に説明するのは難しい。

俳優・女優は、視聴者に印象を残してなんぼだと思っている。もちろんドラマの筋をぶち壊してはいけないけれど、本筋をジャマしない範囲でなら大いに「怪しげな演技」を見せるべきである。そして、いわゆる美男・美女ほど見た目のイメージを裏切る「怪演」をすべきなのだ(そういう意味では伊藤雄之助とか殿山泰司とか大泉滉なんかは見るからに“怪優”なので、見た目とのギャップがあまりない)。

昨年、ある舞台で見た松原由賀という女優は、素顔は可愛い女の子なのに奇声を発するせむし怪人の役を演じていた。これがまた素晴らしい怪演で、こういう役者がいるから演劇界は無視できないのである。

脚本家が考えるキャスティングには、イメージ通りの配役とイメージを裏切る配役の二通りがあって、実は後者の方が楽しいのだ。

これから出会う若い役者には、どんどん“怪優”に挑戦してほしいものである。

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